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発光分光分析装置ってなに?仕組みをやさしく解説!!

こんにちは!札幌高級鋳物で修行中の佐々木です。
私は今、現場での経験とあわせて、鋳物づくりに関する知識を日々学びながら、金属と向き合うものづくりの奥深さを実感しています。
今回は、鋳造の溶解現場で欠かせない「発光分光分析装置(OES)」について、仕組みから特徴までをわかりやすくまとめてみました。
鋳造メーカーでは当たり前のように使っていますが、「どうやって成分を測っているの?」と聞かれると、意外と説明が難しいもの。
メーカーの技術情報などを参考にしつつ、やさしくお伝えしていきます。

発光分光分析装置とは?

発光分光分析装置(OES:Optical Emission Spectrometer)は、
金属にエネルギーを与えて光らせ、その光の“色”を調べることで、元素の種類と量を測定する装置です。

金属は元素ごとに固有のスペクトル(光の波長)を持っており、
鉄・クロム・ニッケル・炭素など、それぞれ光る波長が違います。
この“光の指紋”を読み取ることで、成分を瞬時に判断できるのです。
札幌高級鋳物では、300種類近くの材質を扱っているため、OESは品質管理に欠かせない最重要装置のひとつです。

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OESの仕組み(ざっくり5ステップ)

①サンプル採取

溶解した湯からサンプルを採取し、表面を磨きます。

② 放電で金属表面を励起

装置の電極と金属試料の間に高電圧を流すと、スパーク(火花)が飛びます。
この瞬間、試料表面の原子が高エネルギー状態になり、光を出す準備ができます。
当社が使っているのは 固体試料をそのまま測れるスパークOES です。

③ 原子が固有の光(スペクトル)を出す

 


※イメージ

励起状態になった原子が基底状態に戻るとき、
元素に固有の光(波長)を発します。
これが「元素のバーコード」となる情報です。

④ 分光器で光を波長ごとに分ける


※イメージ

装置内部の回折格子などの分光機構が、
光を細かい波長に分離します。
より細かく波長を分けられるほど、正確な分析が可能になります。

⑤ センサーで強度を読み取り、濃度に変換

分けられた光をCCDやCMOSなどの検出器で受け取り、
「どの波長の光がどれくらい強いのか」を測定します。
光の強さ=元素の量に対応します。

鋳造現場に向いている理由

OESが鋳造の炉前分析で活躍するのには理由があります。

とにかく速い

試料を削ってセットすれば、数十秒で結果が出るため、
溶解中の成分調整のタイミングを逃しません。

 ② 多元素を一度に測れる

耐熱鋼や耐摩耗鋼など、複雑な成分バランスの鋼種でも、
複数元素を同時に分析できます。

 ③ 微量成分も把握できる

P・Sなどの微量成分管理にも対応。
高い品質要求に応える鋳造では非常に重要です。

OES と ICP-OES の違い

発光分光分析装置には2タイプの機械があり、簡単に比較すると次の通りです。

OES(当社が使用)
→ 固体のまま測定
→ 炉前で高速測定が可能
→ 鋳造の品質管理に最適

ICP-OES
→ 試料を溶液化して測定
→ 研究室レベルの高精度分析向け
→ 炉前用途には不向き

当社では、溶湯の状態変化が早いため、
“固体試料を削ってすぐ測れるOES” でなければ成分調整が間に合いません。

札幌高級鋳物での活用シーン

  • 炉前での成分調整

  • 製品ロットごとの品質保証

  • 成分データの長期保存(トレーサビリティ)

  • 新材質開発における成分検証

扱う材質が多いからこそ、OESは当社の品質を支える縁の下の力持ちです。

佐々木が「サンプル採取」に挑戦してみた!

OESで分析するには、まず試料を“採取”しなければなりません。
実はこの作業、想像以上に熱くて大変…!

そんなサンプル採取に佐々木が挑戦してみました。
よければこちらから動画をご覧ください👇


▶ 🔰 新人 vs. 先輩 その2 🎥✨ 今回は、溶解作業のひとつ「炉中分析用のサンプル採取」に挑戦!

まとめ

発光分光分析装置は、金属を光らせて“元素の指紋”を読み取る分析装置です。
鋳造現場では、スピード・多元素同時測定・精度の面で大きな力を発揮します。

札幌高級鋳物のように、数千種類の材質を扱う会社にとって、
発光分光分析装置はなくてはならない相棒です。

これからも、現場のリアルな様子や技術の裏側を発信していきますので、ぜひお楽しみに!

参考資料

  • 日立ハイテク「発光分光分析装置の原理」

  • 島津製作所「発光分光分析の基礎」

  • SPECTRO「Arc/Spark OES Working Principle」

  • 東レリサーチセンター「ICP-AESとは」

  • アイケン工業 コラム「発光分析関連」

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