BLOG

鉄に感謝する日がある!? ~12月1日は「鉄の記念日」です~

こんにちは!札幌高級鋳物で修行中の佐々木です。
私は現在、現場での経験とともに、金属や鋳造の歴史、素材、技術に関する知識を少しずつ学びながら深めています。

今回は、私自身も最近知って驚いた「鉄の記念日」についてご紹介したいと思います。
普段何気なく使っている「鉄」という素材にも、実は歴史と技術の物語がぎっしり詰まっています。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです!

12月1日は「鉄の記念日」

皆さんは、12月1日が「鉄の記念日」であることをご存じでしょうか?
この日は、日本で初めて洋式高炉による製鉄に成功した記念日として、1957年に制定されました。
鉄の歴史を語るうえで欠かせないこの節目の日に、私たちも「鉄」と「ものづくり」について少し立ち止まって考えてみたいと思います。

鋳物工場の象徴「キュポラ」

かつて多くの鋳物工場のシンボルでもあったのが、「キュポラ」という溶解炉です。
これは鋼板で作られた円筒に耐火レンガを張り、コークスと金属(地金)を交互に入れて空気を送り込み、熱で溶かす構造の炉です。
鋳物の街・川口(埼玉県)では、1980年代ごろまでこのキュポラが無数に立ち並び、工場の煙突から火花が立ち昇る様子が町の風景そのものでした。
映画『キューポラのある街』の舞台となったことでも知られています。
私も実際にキュポラの資料映像を見たとき、その迫力と熱気に圧倒されました。
現在では環境や制御の観点から高周波炉や電気炉への移行が進んでいますが、キュポラは鋳造の原点を象徴する装置として今も語り継がれています。

「キュポラ」の語源と世界の歴史

キュポラ(Cupola)という言葉は、ラテン語で“樽”を意味する「cupa」に由来し、ヨーロッパでは18世紀から導入が進みました。
日本でも明治初期、長崎製鉄所や釜石製鉄所をはじめとする施設で洋式鋳造技術の一環として導入され、
近代鋳造・製鉄の出発点となりました。

日本の近代製鉄の父・大島高任

1856年、鉱山技術者の大島高任(おおしまたかとう)は、出雲の鉄を用いて反射炉による大砲製造に取り組み、
その後、1857年12月1日、現在の岩手県釜石市で日本初の洋式高炉を稼働
させ、初めて出銑(しゅっせん)に成功しました。
これが日本の近代製鉄の始まりとされ、100年後の1957年、この功績を記念して「鉄の記念日」が制定されました。
私たちが当たり前のように使っている鋳物や鉄の製品も、この大きな一歩から始まっていると思うと、感慨深いですね。

火を祀る「鞴(ふいご)祭り」

鋳物や鍛冶といった火を扱う職人たちには、火と空気に感謝し祈る風習も残っています。
たとえば「鞴(ふいご)祭り」は、空気を送る道具=ふいごの無事を祈願する祭りで、旧暦11月8日に稲荷神社などを参拝します。
私たち札幌高級鋳物でも、火を扱う現場での安全管理や設備への感謝を常に意識しています。
ものづくりの根本には、自然の力を畏れ、尊重する精神が息づいているのだと改めて実感します。

「鉄の日」に思いを馳せて

鋳物は鉄という素材なしには成り立ちません。
私たちは、300種類以上の材質を扱いながら、常に「どうすればもっと良い製品がつくれるか」を考え続けています。
「鉄の記念日」は、その原点に立ち返り、今ある技術や設備、そしてそれを受け継いできた人々に思いを馳せる貴重な日だと感じます。

これからも、ものづくりの奥深さや魅力を皆さんにお伝えしていけたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

【参考文献】

  • 『トコトンやさしい鋳造の本』B&Tブックス 日刊工業新聞社

  • 『日本の鋳造と溶解の歴史』一般社団法人日本鋳造協会

BACK TO LISTS