
製造業のこれからと、私たちのこれから
こんにちは!札幌高級鋳物で修行中の佐々木です。
私は現在、鋳物や金属材料、製造業全体について現場で学びながら、文献を通じて知識を深めている最中です。
今回は「製造業の今」と「札幌高級鋳物のこれから」について、自分なりに考えるきっかけがあったので、ブログにまとめてみました。
社会全体が大きく変化するなかで、ものづくりの現場にいる私たちは何を感じ、どう動こうとしているのか、文献で学んだことと、私たちの会社のリアルな取り組みを交えながら、皆さんに共有したいと思います。
ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!
日本の製造業はいま、何に直面しているのか?
文部科学省や経済産業省の報告によれば、製造業は現在、いくつもの大きな課題に直面しています。
経済産業省は『製造業を巡る現状と課題』で以下のように述べています。
”エネルギー価格の高騰、人手不足、国際的なサプライチェーンの混乱、そして脱炭素に向けた構造転換など、製造業は複数の難題に同時に対応することを求められている”(経済産業省 2023:3)
また、同文献では、**海外への生産移転(いわゆる空洞化)**による技術伝承の断絶や地域経済の弱体化も深刻化していると指摘されています。
地方の製造業にとって、これは“企業の存続”に関わる問題です。
私自身、日々の業務を通じて「人が足りない」「技能が偏っている」といった課題を実感しています。だからこそ、現場の工夫や技術継承の仕組みづくりがいっそう重要になると感じています。
鋳物の魅力を“暮らしの中へ”――OKUDAKEの提案

札幌高級鋳物では、長年にわたり産業用途向けに鋳物を提供してきましたが、近年はその技術を活かして一般消費者向けの製品開発にも挑戦しています。
それが「OKUDAKE」です。
「置くだけで鋳物の魅力が伝わる製品を」という考えのもと、重厚感や鋳肌の風合いなど鋳物の特徴をインテリアや生活空間に落とし込んだ製品シリーズです。
角幸治は『我が国における製造業のサービス化の変遷と今後の展望』で以下のように述べています。
”製造業は今後、単なる製品提供から脱却し、ユーザーと共創するサービス提供者としての側面を強めていく必要がある”(角 2020:8)
ただ、私たちがOKUDAKEを開発した背景には、「共創」や「流行の文脈」だけでなく、76年間の技術を未来につなげるための素直な問いかけがありました。
「この鋳物の美しさ、もっと多くの人に届けられないか?」という気持ちが出発点です。
3Dプリンターで製品開発の自由度を広げる
現在、社内では小型3Dプリンターを使った製品開発の実験を進めています。
試作の短縮や形状確認の効率化だけでなく、デザイナーとの意見交換にも役立つ場面が増えてきました。
将来的には大型3Dプリンターの導入も視野に入れており、これによりさらなる試作・開発の自由度が広がると期待しています。
藤岡大輔は『カーボンニュートラルの特殊鋼業界へのインパクトとその対応』で以下のように述べています。
”製造工程の柔軟性と資源循環性を両立するためには、デジタルファブリケーション技術の導入が鍵を握る”(藤岡 2022:17)
まさに、これからの製造業には柔軟性とサステナビリティの両立が欠かせないと実感します。
海外展開も、視野に入れながら
竹内修三は『日本の鋳鉄鋳物業界の現状と今後』で以下のように述べています。
”中小鋳物業の生き残りは、技術の深化と用途の水平展開、特に異業種・異文化への展開にかかっている”(竹内 2022:14)
札幌高級鋳物では、既存の鋳物技術が国内外の新しいニーズに応えられる可能性がないか、模索しはじめています。
竹内修三は『日本の鋳鉄鋳物業界の現状と今後』で以下のように述べています。
”中小鋳物業の生き残りは、技術の深化と用途の水平展開、特に異業種・異文化への展開にかかっている”(竹内 2022:14)
ただし、OKUDAKE等の一般消費者向けの製品に関してはまずは日本市場でしっかりと結果を出すことが最優先です。
製品としての価値がきちんと認識され、評価される土壌を国内で築き、海外展開も行っていきたいと考えています。
おわりに
製造業は今、内外からの圧力の中で「次の姿」を模索しています。でもそれは、悲観することではなく、自分たちの強みを再確認し、未来に活かす機会でもあると私は感じています。
札幌高級鋳物のような地方の製造業こそ、地に足のついた技術と発想力で新しい可能性をつくっていけるはずです。
これからも学び続けながら、現場での挑戦を言葉にして発信していきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
専門用語解説
用語 | 解説 |
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OKUDAKE | 札幌高級鋳物が開発した一般消費者向け鋳物スピーカー。生活空間に置くだけで鋳物の存在感を伝える製品。 |
空洞化 | 製造業の海外移転により、国内の雇用・技術基盤が縮小してしまう現象。 |
サプライチェーン | 製品が作られ、届けられるまでの供給網。近年は国際的な不安定化が課題に。 |
デジタルファブリケーション | 3Dプリンターなどを使って、設計から製造までをデジタルで完結させる技術。 |
出典
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経済産業省『製造業を巡る現状と課題』(2023年5月)
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角幸治『我が国における製造業のサービス化の変遷と今後の展望』(2020年)
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竹内修三『日本の鋳鉄鋳物業界の現状と今後』(2022年)
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藤岡大輔『カーボンニュートラルの特殊鋼業界へのインパクトとその対応』(2022年)