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耐食鋼(ステンレス)って何だ? ~錆に負けない鋼のひみつ~

こんにちは!札幌高級鋳物で修行中の佐々木です。
私は現在、日々の業務とあわせて、鋳物や金属材料について勉強を続けています。今回は「耐食鋼」について文献を通じて学びを深めました。
「鉄は錆びるもの」というイメージがありますが、その常識を覆すのがこの耐食鋼。
素材そのものに“錆びにくさ”を備えさせることで、社会インフラや製造業に大きな価値をもたらしています。
このブログでは、耐食鋼の基礎から開発技術、実際の使用場面まで、私が文献から学んだ内容をわかりやすくお届けします。ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!

耐食鋼とは? ~腐食に立ち向かう素材設計~

鉄は水や酸素に触れると錆びてしまいます。これを「腐食」と呼び、鋼材の性能を大きく損なう原因となります。
耐食鋼は、合金設計によって錆びにくさを内在化させた鋼材です。主にクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などを添加することで、表面に不働態皮膜を形成し、腐食の進行を防ぎます。
たとえば、近年注目されているのがSn(スズ)を微量添加した鋼材です。これは、鉄の溶解反応を抑えることで腐食を遅らせる効果があります。
西上博之ほかは『耐食鋼材の開発及び評価』で以下のように述べています。

”Sn添加によりFeに比べてアノード反応を抑制した。母材のFeとともに溶出した微量のSnイオンによりアノード反応が抑制されたと考えられる”(西上 2020:125)

実験で証明された耐食性の高さ

Sn添加鋼の効果は、実際の暴露試験によっても確認されています。
西上博之ほかは『耐食鋼材の開発及び評価』で以下のように述べています。

”開発鋼と標準鋼を大阪ガス泉北製造所に0.5年間暴露させた結果、開発鋼は塗膜剥離面積を約40%低減した。また、腐食深さも著しく抑制されていた”(西上 2020:126)

これは過酷な塩害環境を想定した条件での結果であり、耐食鋼の現場適応性を裏づける重要なデータです。

どこで使われているの? ~身近で活躍する耐食鋼~

耐食鋼は、錆や腐食によって製品寿命や安全性が損なわれやすい高リスク環境で多く使われています。代表的な使用例は以下のとおりです。

  • LNGプラントのパイプライン・支持構造

  • 橋梁・高架道路などの鋼構造物(特に海沿いや積雪地域)

  • 屋根材・外装材(塩害地域の建築物)

  • 電気温水器・ボイラー・エコキュートのタンク

  • 自動車のマフラーや排気部品など熱と腐食を受ける部分

三浦和也は『塗装用耐食鋼板の防食特性と鋼橋への適用性評価』以下のように述べています。

”海岸部での腐食を考慮し、塗装用耐食鋼板の適用を進めることで、橋梁メンテナンス費用の削減と耐久性向上が図られている”(三浦 2017:165)

北海道でこの鋼を鋳物にするということ

私たち札幌高級鋳物は、北海道で唯一、特殊鋼(耐食鋼・耐熱鋼・耐摩耗鋼)を鋳物として製造しています。取り扱い材質は300種類以上。多くの取引先は道外ですが、北海道にいながら全国の構造物や産業設備に貢献できるのが、この仕事の面白さです。
腐食しにくい部材を必要とする現場では、高精度な鋳造と材料選定の知識が不可欠です。今後もその力を磨き、より価値ある製品をお届けしていきたいと思っています。

おわりに

耐食鋼は、金属にとって宿命とも言える「錆び」と向き合い続けてきた素材技術の集大成のような存在です。
文献を通じて、合金設計の奥深さや実験に裏付けられた性能向上の成果を知ることができました。
札幌高級鋳物でも、そうした材料の力を最大限に活かす鋳造技術を日々追求しています。これからも現場と文献の両方から学びを深め、皆さんにものづくりの魅力をお届けしていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

専門用語解説

用語 意味
耐食鋼 腐食(錆び)に強い合金設計が施された鋼材
Sn(スズ) 腐食反応を抑える効果のある微量合金元素
アノード反応 金属が電子を失って溶け出す腐食現象の主因
不働態皮膜 表面に形成される保護性のある酸化膜
暴露試験 実際の環境下で素材の耐久性を長期間検証する試験方法

出典

  • 西上博之ほか『耐食鋼材の開発及び評価』2020年

  • 三浦和也『塗装用耐食鋼板の防食特性と鋼橋への適用性評価』2017年

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