
鋳物の見積で「今後の製作数」を聞く理由とは? ― 木型(手込め・定盤・発泡)の違いをわかりやすく解説 ―
こんにちは!
札幌高級鋳物で修行中の佐々木です。
鋳物の見積を作るとき、私達はよくこんな質問をします。
「今回だけの製作ですか?」
「今後も同じものを継続して作る可能性はありますか?」
鋳物に触れたことがない方からすると、
「えっ、今は1個だけなんだけど…なんで先の話まで?」
と思われるかもしれません。
でも、この質問には
鋳物づくりのコストと品質に関わる大切な理由があるんです。
今回は、弊社が取り扱い可能な型に絞ってお話していきたいと思います!
そもそも木型って何?
鋳物は、金属が溶けて固まるだけでは形になりません。
まず、「木型(きがた)」という元になる型を使って砂の中に形を作り、そこに溶けた金属を流します。
木型は鋳物づくりの土台。
その種類や使い方次第で、コストが変わるんです。
種類① 手込め型
少量・試作向きの定番
手込め型は、
職人がひとつひとつ手作業で砂を詰めていく方法です。
木型自体は定盤型に比べて比較的安く作れますし、
1個だけの試作やスポット案件には向いています。
ただし、注意点があります。
この手込め型では、
-
溶けた金属の通り道である「湯道(ゆみち)」
-
金属の流れを調整する「セキ(堰)」
といった部分も、そのつど職人が手で作ります。
札幌高級鋳物でも職人による砂込めを行っていますが、この工程が増えるということは、
その分 人の手間=人件費がかかるということなんです。
つまり、
「1個だけならいいけど、数が増えてくるとコストが積み上がる」
という傾向があります。
砂型鋳造は「上型」と「下型」でできている
ここで、砂型鋳造の基本構造について
少しだけ触れておきます。
砂型鋳造では、
-
上型(うわがた)
-
下型(したがた)
この2つを作って、最後に合わせることで、
ひとつの鋳型になります。
実はこの
上型と下型をどう作るかによって、
作業効率に大きな差が出てきます。
手込め型の場合
手込め型では、
-
まず上型を作る
-
その後に下型を作る
というように、
順番に作業を進める必要があります。
さらに、湯道やセキの設置もその都度行うため、
-
作業工程が増える
-
作業時間が長くなる
-
人による差が出やすい
といった特徴があります。
少量であれば問題ありませんが、
数量が増えると、この「手間」がそのままコストに影響してきます。
種類② 定盤型
定期製作や数量増ならこちら
定盤型は、
木型を「定盤(じょうばん)」という台に固定し、
湯道やセキも含めた状態で一体化された型です。
この定盤型の特徴は、
上型と下型を同時に作成できる
という点です。

あらかじめ型の位置関係が決まっているため、
-
型合わせのズレが起きにくい
-
作業手順がシンプル
-
誰が作業しても条件がほぼ同じ
というメリットがあります。
定盤型は「最初は高い」が、結果的に効率的なことも
たしかに、
木型の初期費用だけを見ると、
定盤型は手込め型より高くなります。
ただ、
-
作業時間が短くなる
-
作業のバラつきが減る
-
結果として人件費が抑えられる
といった効果が積み重なることで、
継続して同じ形を作る場合や、
数量が増える場合には、
結果的にコストパフォーマンスが良くなるケースも少なくありません。
種類③ 発泡スチロール型
1回きりのワンオフに
「今回だけしか使わない」
「二度と同じものは作らない」
こんなケースには、
木型を使わずに発泡スチロール型という方法もあります。
これは、製品と同じ形の発泡スチロールを用意し、
そこに溶けた金属を流し込むことで、
発泡体が消えてそのまま金属が形になる方法です。
このやり方のメリットは、
木型が不要になり、初期費用を大きく下げられること。
ただし、
-
寸法精度
-
表面の仕上がり
-
材質や形状の制約
などの理由で、
何でもできるわけではありません。
そのため、形状や用途を確認したうえで判断しています。
なぜ「今後の個数」を聞くのか?
結局のところ、
鋳物づくりには「使う木型の種類」があり、
それによってコストの構造そのものが変わります。
「今だけ1個なのか?」
「将来、同じものを何度も作る可能性があるのか?」
この違いは、単なる枚数の話ではなく、
その後のコスト・納期・仕上がりにも影響するんです。
だからこそ、
私たちはちょっと先の話もお聞きしています。
まとめ:お客様の「ものづくり」を一緒に考えたい
鋳物は、
「同じ形でも、作り方によってぜんぜん違う値段になる」
そんな面白いものづくりです。
僕たちは、
単に安い方法を選ぶだけではなく、
お客様にとっていちばん無駄のない方法を
一緒に考えたいと思っています。
鋳物が初めてでも安心してください。
「こういうものを作りたい」と思ったら、
まずはお気軽に相談してください。
これからも日々学びながら、
現場での気付きや考えを発信していきますので、
ぜひ楽しみにしてもらえたら嬉しいです!