
鋳造と鍛造、なにが違う?
こんにちは!札幌高級鋳物で修行中の佐々木です。
私は現在、日々の業務と並行して、鋳物や金属材料について文献を読みながら勉強を続けています。
今回は、ものづくりの基本ともいえる加工法「鋳造」と「鍛造」の違いについて学びました。
この2つはどちらも金属を目的の形に加工する技術ですが、工程の原理も、得られる性質もまったく異なります。
そこで今回は、文献で学んだ基礎知識に加え、弊社の取り組みや強みも交えて、鋳造と鍛造の違いについてわかりやすくご紹介したいと思います!
鋳造とは?——形の自由度が高い、ものづくりの源流

鋳造(ちゅうぞう)は、金属を高温で溶かし、鋳型(いがた)と呼ばれる型に流し込んで固めることで目的の形にする加工法です。人類最古の金属加工技術のひとつで、現在も建設、インフラ、機械部品、工芸品まで幅広く活用されています。
とくに、中空構造・枝分かれ形状・大型構造体といった複雑形状に対応できる点が大きな魅力です。複雑な構造でも一体成形できるため、部品点数や溶接の手間も削減できます。
鋳造の主な種類
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砂型鋳造:鋳型に砂を使う。中〜大物部品向けで汎用性が高い。
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金型鋳造(ダイカスト):金属型を使用し、寸法精度や量産性に優れる。
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ロストワックス鋳造:精密鋳造に使われ、美術品や複雑な部品に対応。
弊社・札幌高級鋳物では、「砂型鋳造」をベースに、アルカリフェノール自硬性砂やフラン自硬性砂を製品特性や生産条件に応じて使い分けています【公式サイトの工程紹介】。
【鋳造のメリット】
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複雑で自由な形状に対応可能
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大型部品も一体で製作できる
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中空構造や複数部位の一体化に強い
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初期コストが比較的安価で、小ロットにも対応
【鋳造のデメリット】
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凝固時に気泡(ブローホール)や介在物(スラグ)などの内部欠陥が生じやすい
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冷却・凝固時の収縮による寸法変化
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強度・靭性は鍛造に比べて劣る傾向あり
こうした課題に対し、弊社では以下のような製造技術と検査体制を整えています。
▶ 欠陥を未然に防ぐ技術
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CAE鋳造シミュレーションの活用:湯流れや凝固挙動を事前に予測し、湯回り不良・引け巣の発生を防ぎます。
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減圧脱ガス処理・フィルターの使用:金属溶湯中のガスや異物を除去し、健全な鋳造品を確保。
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湯口・押湯設計の最適化:冷却収縮や凝固偏差を見越した設計で、内部健全性を高めています。
▶ 欠陥を検出するための検査体制
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超音波探傷試験(UT):音波の反射を利用して、内部のき裂や空洞を検出。
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磁粉探傷試験(MT):磁化した金属表面に鉄粉をかけ、き裂や欠陥部を可視化。
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浸透探傷試験(PT):染料を使って表面の微細な欠陥を検出。
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寸法・外観検査:専用ゲージや三次元測定機を用いた精密なチェック。
特に、耐熱鋳鋼品などの高信頼性部品では、複数の非破壊検査を組み合わせて評価するなど、お客様の求める品質に応じた柔軟な検査対応を実施しています。
鍛造とは?——緻密な構造と高強度を生み出す加工法

鍛造(たんぞう)は、金属に圧力や打撃を加えて変形させ、目的の形状に加工する方法です。溶かして固める鋳造とは違い、金属の内部組織(結晶構造)を変形させて強度や靭性を高めることができるのが特徴です。
クランクシャフトやギア、建機のジョイント部など、強度や耐久性が求められる部品に多く使われています。
鍛造の主な種類
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冷間鍛造:常温で行う。小型部品や高精度品に。
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温間鍛造:中温域で成形性と精度のバランスを取る。
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熱間鍛造:1000℃前後に加熱して大きな変形が可能。
鍛造のメリット
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機械的強度、疲労耐性に優れる
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内部欠陥が少なく、信頼性が高い
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応力方向に沿った繊維構造が得られる
鍛造のデメリット
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複雑形状や中空部には対応しづらい
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専用金型や設備が必要でコストが高い
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小ロット生産や試作には不向きな場合がある
鋳造と鍛造の違いまとめ(比較表)
比較項目 | 鋳造 | 鍛造 |
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加工方法 | 金属を溶かして型に流し込む | 金属に圧力をかけて変形させる |
形状自由度 | 高い(複雑形状・中空可能) | 低い(対称・単純形状が中心) |
強度 | 中程度(材質や設計に依存) | 非常に高い(緻密な組織構造) |
欠陥リスク | 気泡・引け巣などが発生することも | 少ない(欠陥が押し潰される) |
製造コスト | 小ロット対応・初期費用が低い | 金型や設備コストが大きい |
用途例 | 建設部品、マンホール、耐熱構造体 | 自動車のクランクシャフト、建機のアーム |
札幌高級鋳物としての視点
私たち札幌高級鋳物では、「形状の自由度」「中空構造」「耐熱性」「一体成形」など、鋳造でしか実現できない価値をお客様に提供しています。特に耐熱鋳鋼品や鋳鉄製マンホール蓋など、過酷な環境下で使われる部品を得意とし、試作〜量産まで一貫対応しています。
一方、鍛造の強みを活かした製品選定が必要な場面では、お客様と一緒に最適な製法を検討するケースもあります。鋳造と鍛造、どちらが「上」ではなく、目的に応じて「適材適法」を選ぶことが重要なのだと改めて実感しました。
まとめ
鋳造と鍛造は、どちらも私たちの生活を支える重要な加工技術です。
それぞれの特性を理解し、製品の用途や必要とされる性能に応じて使い分けることで、より良いものづくりが実現できます。
今回の学びを通して、札幌高級鋳物の強みを改めて見つめ直すことができました。
引き続き、鋳造のプロとして成長していけるよう精進してまいります!
参照文献
・永瀬丈嗣ほか『金属鋳造と砂型:1.その歴史と最近の進展』日本鋳造工学会(2022年)
・日本鋳造工学会『鋳造の基礎』(2021年)
・日本塑性加工学会『鍛造について』(2022年)